著
篠丸 のどか
レーダーには映らない、小さく、深き、絶海の森。
そこには、退屈で無慈悲な仕事を一時(いっとき)忘れ、大切だった「何か」を思い出させてくれる温かい有機物が存在した。
座標もわからないそこにたどり着くためには、久しく硝煙と海風しか感じてこなかった我が嗅覚の奥にある懐かしい感覚を呼び戻し、自分に正直になることが、なぜか一番の道標(みちしるべ)だった。
しかし、そのどこかに置いていったはずの生身の記憶の断片が、この世界の、この國のゆく先に大きな揺らぎをもたらすとは知らずに‥‥。
いまより少し先の未来。深刻な食糧難によって、泥沼の戦争状態に陥った世界。地図に存在せず、レーダーにも映らない、小さく、深き、絶海の孤島に、おじじと共に静かに暮らす金髪の少女・ルルのもとには、ある“訪問者”が定期的にやって来る。“訪問者”の名は斉藤。この世界 唯一にして最強の兵器である―――。
製品名 | 花と黒鋼(1) |
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著者 | |
発売日 | 2015年08月06日 |
初出 | 『ヤングマガジンサード』2014年第2号、第3号、2015年第1号、第2号、第4号、第5号、第7号 |