【講談社・マンガビジネストーク】「マガジンポケット」事業担当者が語る舞台裏 後編|マガポケの今後と展望

2022年現在、累計1900万ダウンロードを超え、版元発のマンガアプリとしてトップの地位を駆ける「マガジンポケット(通称・マガポケ)」。後編となる今回はビジネスとしてのアプリ事業の展望について担当者に語ってもらいます。

後編となる今回は、マガポケの今後とマンガアプリ業界の展望について語っていただきました。
※前編はこちらから

【本記事のトピックス】

  • マガポケの今後の方針、これからの課題
  • 雑誌購読者とマンガアプリのユーザーの違いとは
  • 広告媒体としてのマンガアプリ
  • 今後のマンガアプリ業界を見渡す

●今後のマガポケの方針について
──マガポケの今後の方針についてお教えください。

仲田
ここ1~2年は好調ということもあり、方針を大きく変えるということはないと思います。その中で目標としているのは、オリジナル作品、それも骨太なヒット作品の創出です。メディア化しやすく、多年代にリーチできる王道作品は、老若男女すべての人たちに幅広く読まれやすく、大ヒットになる可能性を持っています。たとえば『進撃の巨人』『東京卍リベンジャーズ』といった、その時代を象徴するようなビッグヒット作をマガポケのオリジナル作品から生み出すことが、僕がチーフでいる間にやるべき一番のミッションだと思っています。

とはいえ出そうと思って出るものではないので、ヒットが出る環境を作る、というのが大切かなと。そのためにはマガポケの規模もできるだけ拡大し、多くのユーザーにとって使いやすいアプリとなるよう、コツコツと改善を続けていく運営をしていかなければと思います。

──雑誌とアプリの読者層の違いとして、ロイヤリティの違いのほかにありますか。

仲田
オリジナル作品を掲載し始めた当初は暴力、サスペンスなど、分かりやすいエッジの効いた作品が多かったので、ユーザーもそういう刺激を好む属性の人が多かったのですが、最近は徐々に違いがなくなったと感じます。それはマガポケにもスポーツものとかヤンキー系、純愛ものなど、いわゆる少年マンガらしい作品や、異世界ものが入ってきていることなどが理由かと思います。

──アプリやデジタル環境でマンガを読むのが普通になったとか、急激な伸びを実感したタイミングはいつでしょうか。

仲田
やはりコロナ禍に入ったことがきっかけになったと思います。そのタイミングでアクセス数や課金額はグッと上がりました。いわゆる巣ごもり需要の影響は大きかったと思います。

今はだいぶ以前の生活が戻ってきていますが、それでも全体的に見ると実績は右肩上がりなので、アプリでマンガを読むという行為は完全に定着してきていると感じます。

──新しい作品の発掘はどのように行っているのでしょうか。

仲田
持ち込みや新人賞などを行っています。持ち込みは月に100作品ぐらいはあるでしょうか。半年に一度の新人賞にも300作ぐらいの応募があります。

平岡
作品が生み出されていく仕組み自体は昔と変わっているわけではなくて、世の中に出ていく形が変化しました。紙だけの時代は作品を生み出していれば勝手にヒットが出てうまく回っていくというサイクルがあったのですが、今はもうそういう時代ではない。なので、作品が健全に売れていくというシステムを作り直している感覚です。それが紙から電子に少しずつ変わっていっている印象です。

ただ、週マガを買ってくれている読者というのはもともとマンガがとても好きな人たちなので、いわゆる骨太の、電子で売れにくいジャンルの作品は週マガに載ったほうが、その読者たちが確実に世の中へ押し出してくれる、光を当ててくれる、という感覚はいまだにあります。そのあたりはこれからのマガポケの課題ではあります。『WIND BREAKER』等、成功している作品も出てきているので、それをうまく再現できるようにしていかなければと考えています。とはいえ、今も昔も大切なのは作品が面白いということに変わりはないですが。

マガポケオリジナルの人気作一例。SNS上で話題になることも多い

●今売れている作品と読者の声について
──オリジナル作品で、今売れている作品はどのようなものでしょうか。

仲田
『十字架のろくにん』や、『転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます』、『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』あたりでしょうか。

──異世界モノが多いですね。やはり根強い人気があるんでしょうか。

仲田
ありますね。異世界モノが好きな読者は、他のジャンルと違ってすごく"横読み(同ジャンルの他作品も読む)"をする傾向があります。そういったことから、同じ人がいろんな異世界ものを読んで購入してくれて、すごくヒットしやすい環境があると思います。30~40歳代の男性、お金に余裕のある層が読者に多いです。

──読者の声はどうやって反映しているのでしょうか。

仲田
各作品にコメント欄があり、読者が書き込めるようになっています。あとはSNSに感想をツイートしてくれる人がたくさんいるので、それをチェックしています。

平岡
基本的には作品ごとにTwitterの公式アカウントを作るので、担当編集者は必然的にチェックします。Twitterやコメント欄に関しては、作家さんは見る人と見ない人が両極端ですね。

──ほかにユーザーの動向で気にしていることはありますか。

仲田
やはり一番見ているのは課金額です。ある作品が新連載で始まったとして、マガポケは2話目を先読みできるので、2話目がどれくらい売れたかがすぐにわかります。雑誌でいう「読者アンケート」に似ているかもしれません。作品を測る最も大きな指標のひとつです。

あとはやはりコメントですね。内容よりも数を気にしています。たとえば新連載が始まった際に、コメント数が他の作品と比べて2倍3倍となっていると、注目されているというのがわかります。

ゲームコラボ広告タイアップ事例
コナミデジタルエンタテインメント「実況パワフルプロ野球」×『ダイヤのA』

●コラボや広告について
──マガポケのオリジナル作品で、コラボレーションや商品化などの事例があったらお教えください。

仲田
グッズは普通のマンガ作品と同様に商品化されていますね。企業コラボでいうと、コナミさんのアプリゲーム「実況パワフルプロ野球」と『ダイヤのA』など、ゲームでのコラボ実績が多くあり、それに合わせた広告出稿があります。

──マガポケ自体が広告媒体としても注目されている、という面もあるわけですね。

仲田
広告出稿の問い合わせは増えています。実現の可否はともあれ、かなりの数の問い合わせが寄せられています。

──マーケターやプロモーションを考えている人に向けて、マンガアプリがどういう役割を果たしているとお考えでしょうか。

仲田
マガポケ掲載作品とのコラボ商品などは、ターゲット層も分かりやすく親和性は非常に高いと思います。

平岡
たとえばゲームとコラボしてマガポケにそのゲームの広告が載ったとして、どれくらいのユーザーが遷移したかなどのデータは、当然ながらきちんと報告させていただいています。

広告出稿やIPコラボを考える企業としては、そのキャラクターの認知度や人気を想定して、自分たちのサービスへと誘導することが目的ですよね。マンガアプリのユーザーは作品やキャラクターに対して熱量の高いファンが集まっている場所ですから、コラボや広告を出稿するルートとしては効率的な設計になっていると考えています。マンガIPとコラボしたクライアントさんにとってはとても広告を出しやすいですし、無作為に出稿するより数字が確実に取れますから、リピートしてくださるクライアントさんも多いですね。

●今後の展望について
──今後、マンガアプリはどうなっていくのか。業界的な展望などはどう捉えていますか。

仲田
まだまだ伸びると思います。急激な右肩上がりはコロナ禍までかもしれませんが、まだ天井じゃないという感覚はおそらくマガポケだけでなく、他のアプリもそう感じていると思います。各社がマンガアプリユーザーを獲得していく動きは大きくなっていくのではないでしょうか。

もしかしたら、あくまで将来的な話ですが、紙の雑誌は今後読まれなくなっていくかもしれません。そうなったときの主要な媒体はというと、おそらくマンガアプリが筆頭に上がってくるはずです。その時までに準備をしてきたところが覇権を握ることができるので、ここからが本当の戦いです。

平岡
そうですね。しっかりと準備していければと思います。


「面白いマンガ作品を生み出すこと」を根本としているからこそ、人気作品が生まれる場として成熟してきたマガポケですが、業界の先頭を走っている現状に満足することなく、すでに次のステージを目指しています。
マンガアプリを取り巻くこれからの時代についても語っていただき、示唆に富んだインタビューとなりました。

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