電子書店機能も備え、広告媒体としても独自性を持つ! 【講談社・マンガビジネストーク】「コミックDAYS」事業担当者が語る舞台裏|後編

2018年に誕生し、オリジナル作品の連載に加え、「モーニング」「ヤングマガジン」「アフタヌーン」といった講談社の人気マンガ雑誌の定期購読サービスも展開する「コミックDAYS(以下、DAYS)」。誕生の理由や成長の過程、今度の展望などを事業担当者が語りました。

「コミックDAYS」3代目チーフ:竹本 佳正(写真右)とデジタル営業担当:久保田 千尋(写真左)が語ります


独自性と即時性に優れた「コミックDAYS」ならではの施策

前編で"事業規模に比べて大きな宣伝費用"をかけているという話がありましたが、施策の中身は実にシンプルで、基本は作品のカラーにあった媒体への広告出稿を行っています。

施策実行は計画的かつ、各編集部との連携のうえで実施している

竹本
アプリ内での施策は、作品のプッシュが基本ですね。どのくらいのスパンで、何本やるのかなどの細かいルールの体系化に向けて、編集部全員で最適な運用方法を常に探っています。
オリジナル作品の場合は、4話目が出たタイミングで推すようにしています。1~4話が全部無料で読めるタイミングになるので、基本はそこでカルーセルバナーを出します。ほかには、編集部から依頼をうけた時などに出す場合もあります。

各編集部との風通しがよく、柔軟性のある開発チームがそろっているため、DAYSの施策は即時性に優れているといいます。SNSのトレンドワードやテーマにあった回を、たった数分で無料公開することも可能とのこと。

竹本
少し前の話ですが、ニュースで風疹が話題になっているのを見た時に『コウノドリ』に風疹をテーマにしたエピソードがあったことを思い出しました。すぐに編集部に相談して、作家さんの許可をとってもらって、その日のうちに専用のバナーを作って、該当する話を無料公開しました。そういった事例が多数あります。

久保田
ほかにも、SNSのプロモーション投稿がハイエンゲージメントを獲得し、売上も立ったし、単行本も重版がかかったから、追加でプロモーションをかけようという判断も速いですね。
オンラインは、最小限のリスクでさまざまな施策を試せるのが利点ですので、いろいろと活用できていると思います。反対にオフラインの施策にはなかなか着手できていないので、今後の課題として認識しています。

「この作品の何話から何話までを無料にするか」といったミクロな管理ができる運用体制が敷かれているため、社会の細かな機微に共感した施策も可能になるそうです。また、過去には独自に打ち出して大ヒットしたキャンペーンもあります。

ネットニュースにも取り上げられた『宝石の国』連載再開施策より

竹本
直近で反響がよかったのは『宝石の国』の連載再開を記念した施策ですね。
1年以上休載していた作品なのですが、テレビアニメ化もされていて、固定ファンがしっかりついています。期間限定で11巻までを無料配信して、単行本化されていなかった89~95話までを無料チケットで読めるようにしました。SNSでも大反響となり、ネットニュースにも取り上げられました。売上は言うまでもなく、単行本の重版もかかりました。

久保田
いろいろな成功例をお伝えしましたが、もちろん失敗といえる施策もたくさんあります。ただ、それらはノウハウやナレッジとして蓄積されるので、長い目で見たら財産のひとつになっているという認識でいます。

失敗も成功もすべて糧にして、新しいチャレンジに向かう。マンガアプリを運営する上で、このマインドや姿勢はとても重要ですが、「何としてでも売りたい!」「多くの人に見てほしい!」と思える魅力的な作品があふれているから、自分たちを動かすのだといいます。


オリジナル作品の魅力がIP化に貢献

DAYSでは『コウノドリ』や『宇宙兄弟』などの固定ファンが多い有名作品が複数ある中、オリジナル作品も大きな存在感を示しています。

「コミックDAYS」は超人気作から話題のオリジナル作品までラインナップが充実している

竹本
オリジナルでは『娘の友達』『ホームルーム』が、DAYSの認知度アップに貢献してくれた代表的な作品です。『娘の友達』は、電子版を含めた累計発行部数が100万部を突破していますし、『ホームルーム』は毎日放送の深夜ドラマ枠でドラマ化もされました。2024年には『この世界は不完全すぎる』のアニメ化もひかえています。

久保田
あとは、DAYSの準オリジナル作品ともいえる『食糧人類-Starving Anonymous-』『食糧人類Re: -Starving Re:velation-』も外せませんね。YouTubeのコミック紹介動画にも出している『望郷太郎』も好評です。過去にはテレビのバラエティ番組でも紹介されていますし、成人男性を中心とした層の関心をしっかりつかんで、YouTubeでも著名な方々にオススメマンガとして紹介していただいています。

竹本
SNSでウケているのは『K2』と『忍者と極道』です。『K2』は「イブニング」の休刊にともなって移籍してきた際に全話無料キャンペーンを実施したことで、SNSで急激に認知が広がりました。施策もヒットしましたし、SNSユーザーとの相性がバツグンです。
『忍者と極道』は私が担当している作品なので、ここで紹介するのも少し照れくさいのですが、純粋に楽しんでくれる人もいれば、真剣にストーリーを考察してくれる人もいるようですね。

『忍者と極道』は、いろいろな角度から楽しめる作品だからか、商品化等のマンガIP活用の相談が多いといいます。

竹本
『忍者と極道』からは、ペンライトのキーホルダーやマスキングテープに、アクリルスタンドなど、多彩なグッズが出ていますね。オファーしてくださる企業担当者様の、作品に対する愛の深さを感じるので、やはり私たちもうれしいです。
ほかの作品たちも個性的でおもしろいので、メディア化、マンガIP活用、広告などにどんどん起用してほしいですね。


「コミックDAYS」の広告媒体としての魅力と今後の展望

IP活用作品が多いだけでなく、広告媒体として優れている点もDAYSの魅力です。

久保田
広告媒体としてのDAYSの特徴は、トップページやマンガの巻頭ページなど、ユーザーが作品に没入する前に広告を出せるので、違和感なく自然に広告露出ができます。また、広告主のブランドセーフティーを保ちつつ訴求することも可能です。
ウェブとアプリありますが、片方だけという選択もできますし、講談社のコミックアプリで唯一、成人向け商材を扱っています。ほかの媒体では広告出稿がむずかしいアルコールなどの嗜好品もDAYSでは掲載することが可能です。

竹本
正直なところ、広告媒体としても「色がないのがカラー」を地で行ってますね(笑)。DAYSの場合は、広告主様の予算規模にあったプランをご提案しています。アプリだけのお試しといった小さなものから、DAYSの運営母体がモーニング編集部なので、雑誌「モーニング」とのコラボといった大きなものまでご提案させていただくことが可能です。

マンガ作品のIP活用の拡大も目標としつつ、広告媒体としての側面の成長も今後の大きな目標です。「色がないのがカラー」「チャレンジの受け皿」精神がしっかりと生きています。

竹本
現在DAYSでは、他社作品もいくつか掲載しています。多いのは、DAYSで連載を持たれている作者が過去に他社で描かれていた作品です。基本的には独占契約などがなされていければ、どなたでも電子書店として使っていただけるようになっています。

久保田
社外にも開かれたマンガ媒体なので、作品の掲載場所がほしい、増やしたいと考えている方には、ぜひ一度ご相談いただきたいですね。

竹本
そうやって、いろんな方面で強みを伸ばしていって、もっともっと大きなマンガ媒体になっていきたいですね。
目標は前年度の倍!
そんな意気込みで、DAYSを成長させていきます。


さまざまなステークホルダーから選ばれるマンガ媒体、また、広告媒体として成長を続ける「コミックDAYS」。今後、業界にとってどのような存在になっていくのか、将来への期待が高まるインタビューとなりました。

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