【講談社・マンガビジネストーク】 「石川県×クッキングパパ」コラボ実現の舞台裏

石川県が、2024年春の北陸新幹線県内全線開業へ向けて、気運醸成の一環として、オリジナル企画を実施しました。それが、石川県と『クッキングパパ』のコラボレーション。この企画は多数のメディアにも取り上げられるなど、大きな反響を呼んでいます。本事例の担当者に、企画実現について、実際の現場ではどのようなストーリーがあったのかを聞きました

本記事の語り手:講談社IPビジネス部所属の西原 剛(写真左)と『クッキングパパ』編集担当の小縄 広樹(写真右)

石川県とのコラボレーションが実現するまで

「週刊モーニング」2022120日発売号で、石川県と『クッキングパパ』のコラボが実現しました。巻頭カラーやマンガ本編に石川県の""の魅力を発信するかたちで駅弁が登場したほか、同号には純広告も掲載されるなど中身の濃い企画となりました。成立の経緯について、講談社IPビジネス部の西原剛が語ります
※コラボ事例についてはこちらから

西原
令和元年度に、2024年春の北陸新幹線石川県内全線開業に向けての気運醸成プロジェクトがスタートしました。最初はその「いしかわ魅力"再発見"コンテスト」にて、弊社が運営するイラスト投稿サイト「ILLUST DAYS」と石川県の魅力をテーマにイラストや1ページマンガを募集するコンテスト「いしかわデイズ」というコラボが実現し、そこからご縁がつながりました。

その後、石川県から「マンガとコラボをしたい」というお声をいただきました。しかも、単なるタイアップではなく「マンガ本編にとりあげてもらいたい」というご意向もあったということが、本件のはじまりです。

令和3年度(2021年)での実現を目指し、さまざまなマンガ作品とのコラボを想定して多くの企画を提案し、その中で『クッキングパパ』ならば地元の食材や料理を通じてコラボが可能かもしれないということになり、具体的な話を進めていくことになりました

『クッキングパパ』の掲載誌である「週刊モーニング」の編集部に相談したところ、同作品内で「全国駅弁作っちゃう」という企画が過去に行われたことがあると教えてもらいました。その第2弾として実施してみては、という編集部からの提案があり、巻頭カラーから連載本編と連動した企画となりました。そうして石川県への提案書が完成。本格的に企画が動きだしました。

石川県とのコラボレーションに向けて実際に使用した提案資料

西原
『クッキングパパ』の駅弁企画は、実在の人気駅弁を作品中で主人公が実際に作ってみる、という企画です。県との折衝や調整、企画の提案などは私がおこない、作者のうえやま先生との打ち合わせ、描き下ろしイラストやポスターなどの校正・監修などは編集部の小縄さんが担当しました。

企画実現の舞台裏

作者のうえやまとち先生の了解も得られ、無事に企画がスタート。しかし実現までにはさまざまな苦労があったといいます。担当編集の小縄広樹は同企画が進行している途中で『クッキングパパ』の担当を引き継いだとのこと。当時について、編集者視点で語ります。

西原
石川県と講談社との直接契約案件でしたので、お互いの意思疎通はスムーズでした。ただ、県の事業として"食"を通じて魅力発信と気運醸成をする趣旨なので、事前に石川県の担当者が県内にある駅弁製造会社に企画説明をおこない、参加希望企業を募集する流れに。そこで応募のあった5社の駅弁を実際にうえやま先生に試食していただき、本編に登場するものを選んでもらうという運びになりました。

小縄
第1弾となった前回の駅弁企画の時は、うえやま先生に現地まで足を運んでいただいて、製造工場を取材。実際に駅弁が作られている現場で話をうかがったうえで、それをマンガにしました。今回も同様に現地でじっくりと取材をして、マンガ本編でもキャラクターが石川県に行く話を構想していましたが、コロナ禍で取材が何度も延期となってしまい、そのうち2021年の終わりまで見えてきてしまったので、編集長と相談し「掲載号を決めてとにかく動こう」ということになり、現地に取材に行けなくても盛り上げられるように、段取りの組みなおしや、マンガの構成を練り直しました。

西原
石川県の担当部署は企画振興部開業企画課というところで、担当者とはオンラインミーティングやメールでの資料のやり取りなど、こまかなコミュニケーションを取りました。とても熱意のある方で、先生が石川県に出向けないとなった際に、「じゃあ私が行きます!」と5種類の駅弁をクーラーボックスに入れて、朝一番の飛行機で先生のもとまで持ってきてくださったんです。そのおかげで、うえやま先生に無事試食していただくことができ、また、その際に先生の細かい質問にもきちんと答えてくださっています。この内容はマンガ本編にも掲載されています。

コラボ収録巻となる『クッキングパパ』164巻は1600話記念も兼ねている
うえやま先生の想いから表紙にはコラボ回に登場した「焼きいなり」が採用

小縄
広告用の描き下ろしのビジュアルに、ご応募いただいた5社の駅弁の料理をバランスよく入れ込む必要があったり、本編についても当初予定していたのとは違う話の構成になってしまったりなど、いくつかハードルはありました。けれども、先生がこころよくご対応してくださって、企画が実現しました。先生はコラボ回が収録されたコミックスの表紙も(石川県特産の)「焼きいなり」にして、作者コメントまで石川県への想いを書いてくださるなど、とてもノッていただけたのでありがたかったです

コラボ収録巻は、1600話到達記念の巻でもあったのですが、コラボ駅弁の方を表紙選んでくださったので、記念を祝うのは裏表紙と帯に回して、駅弁をプッシュするデザインにさせていただきました。

あくまでも"マンガとしておもしろいものを提供する"というスタンスがマンガを作る側として大前提となりますので、コラボによってつまらないものになってはいけませんし、話の筋を変えてしまうということは許されませんので、本編と連動させることはむずかしく、編集部からもOKは出にくいことがあります。
その点、料理を題材とした『クッキングパパ』と駅弁は相性が良かったですし、うえやま先生が地方の食文化にもご理解やご興味のある方なので、うまくコラボができた事例だと思います。いちばんの苦労はコロナ禍のなかで自由がきかない場面も多かったことでしたが、だからこそいい企画にしようという熱意も湧きました。

メディアにも取り上げられ大きな反響に

コロナ禍により現地への訪問が制限され、うえやま先生だけでなく西原・小縄の両名ともに石川県に足を運ぶことができず、県の担当者にも直接は会えなかったとのこと。しかしコラボ企画自体はおおいに盛り上がったといいます。

コラボレーションを記念した描き下ろしのポスタービジュアル

西原
県内のテレビ局が取材に来て番組で取り上げてくれ、配布したポスターやチラシもすごく評判がよかったと県の担当者にとても喜んでいただきました。次の年度には『ふたりソロキャンプ』とのコラボも実現したので、講談社のマンガIPを活用することの効果について、県庁内でも一定の評価はいただけたものと思っています。

小縄
本誌の読者アンケートも、ふだんの倍ぐらいの数が寄せられ、反響の大きさを実感しました。「ぜひ次はうちの地元に来てください!」とか、「コロナ禍が落ち着いたら絶対石川県に行きます!」など、熱い応援コメントもたくさん届いたことが嬉しかったですね。

マンガIPを活用することのメリットとは

今回のコラボを振り返って、あらためて講談社のマンガIPの持つ強みや魅力を実感したと2人は語ります。そこにはどんな可能性が秘められているでしょうか。

西原
マンガに登場した場所を巡る、いわゆる「聖地巡礼」は、すでに定着していると考えています。それとは別に、自治体や観光地が魅力をアピールし、特産品などを宣伝するのに、タレントを起用する感覚でマンガのキャラクターを活用する事例は今後もっとニーズが増えると思っています。作品に熱心なファンがいてくれること、マンガのストーリーや世界観を通じて、訴求力を高めることができるなどの可能性があると考えられます。

小縄
マンガIPと地方自治体とのコラボは、相性がいいものだと思います。『クッキングパパ』でいえば"食"を題材にしているので、地方の食文化の情報も、現地での経験も作品に活きてきます。こういったコラボにはすごくマッチした作品ですね。
連載開始から37年、コミックスは164巻も出ている長寿人気作品ですから、その間に蓄積された情報の厚みも貴重です。

西原
単純にキャラクターを出すだけでなく、クライアントから求められるテーマを、マンガ作品の世界観やストーリーとうまくマッチングさせる企画を考えることで、マンガを起用したコラボは可能だと思います。そして講談社にはいま連載している以外にも不朽の名作など、魅力ある作品がたくさんあります。ビジネスとして考えた際に、この分厚い蓄積と作品数が我々の強みですね。

「マンガを使ってこんなことがしたい」というご要望があれば、ぜひお気軽に問い合わせていただければと思います。


どうやら、マンガコラボ成功の鍵は"企画に込められたストーリー"と"関わる人の熱意"にあると言えそうです。この石川県×『クッキングパパ』のコラボ事例から、プロモーションにおける講談社マンガIP活用の可能性を見いだしていただければ幸いです。

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