認知度は超有名俳優クラス! 講談社ライセンス担当が明かす、あらゆる年代層にリーチする"最強のサラリーマン"『島耕作』が、プロモーションを成功へと導くストーリーテラーである理由
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」。かつて日本がそう呼ばれ、世界を席巻していた昭和の高度経済成長期。その勢いを象徴するかのようにマンガ誌の中で出世街道をひた走るサラリーマンがいた。
『島耕作』である。
1982年、講談社「モーニング」誌上にて読み切り掲載からすぐに連載『課長 島耕作』としてスタートした『島耕作』シリーズは、実社会の時事を取り入れながらさまざまな難局を乗り越えて出世していくさまや、等身大の人間を描いたドラマとして大ヒットを博し、現在ではビジネスマンマンガの代表作としての呼び声も高い作品へと成長した。シリーズ累計発行部数は4700万部を超え、まさに"最強のサラリーマン"ともいえる存在感を示している。
さらに同作はマンガ作品としてだけでなく、「マンガキャラクターをプロモーションやタイアップに起用する」というIP活用のビジネスモデルの先駆けでもあり、これまで160件を超えるという伝説的な実績を更新し成長を続けている存在であることをご存じだろうか。『島耕作』がなぜIP活用の世界でも驚異的なパフォーマンスを発揮し続けることができるのか? ライセンス担当者の米野開人に、『島耕作』シリーズの持つIPとしての力や実績と、プロモーション起用におけるメリットを聞いた。
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【本記事の語り手】
米野 開人(よねの かいと)
講談社 ライツメディアビジネス本部/IPビジネス部 所属
女性誌の広告営業、コミック営業職を経て『島耕作』シリーズのライセンス担当となり、同シリーズを活用したプロモーションやタイアップ企画等のプロジェクトマネジメントを担う。
累計部数4700万部!!「超有名俳優と同レベルの知名度」を持つサラリーマンとは?
──知名度や認知度が高いという『島耕作』シリーズですが、実際どの程度知られていたり、どんな印象を世間では持たれているのでしょうか。
米野:
知名度・認知度については、私もライセンス担当として明確にお答えできるように、本年(2025年7月)第三者機関を通じてリサーチを実施しました。すると、驚くべき結果が見えてきました。
全年齢対象の調査では、年代により認知率が90%近くあり、特に企業の「意思決定層」と呼ばれる50〜54歳の数値が突出していました。これは、人気ドラマや映画の主演俳優さんたちの認知率と同等以上の数値であることも分かりました。ここまでの知名度を持つマンガとその主人公というのは多くないと思います。ましてやサラリーマン、企業や実社会を舞台としている作品では稀有な存在ともいえます。
また、昭和から続く作品ですので、読者も熟年層がコアな層だと思われがちですが、実は近年では10〜30代のファンも増えており、この層の認知率も50%以上であると調査結果で判明したことも驚きました。
調査で企業の「意思決定層」と呼ばれる世代における認知率が突出していることが判明
テレビや映画における代表作多数の俳優と同等の認知率となった
──若年層にもファンが増えている理由には何があるのでしょうか。また、若い人々にも受け入れられる理由はどこにあると考えていますか。
米野:
ファン層の拡大は作品にとっても重要なミッションです。そこで若年層ユーザーが多い講談社のマンガアプリ「マガジンポケット(通称:マガポケ)」に『島耕作』シリーズの掲載が始まったのですが、実は人気ランキングでは常に上位に食い込むほどです。
長期連載作でもあり、単なる"お仕事マンガ"ではなく生々しい"人間ドラマ"として描かれている作品性に魅力を感じてもらえたことがその理由ではないでしょうか。若い人たちからの関心も集める作品であることは、広く知っていただきたいポイントですね。
『島耕作』が築いてきた驚異的なIP活用の実績
──課長から出世して社長、会長、そして社外取締役となった島耕作。彼をタイアップやプロモーションに起用するIP活用のメリットはどこにあるのでしょう。
米野:
これは私自身が仕事の中で実感していることですが、企業様の商品やサービスの効果や価値を訴求するにあたって、ただのアイコンとしてマンガ・キャラクターを起用するだけでは、企業様が期待する効果が出にくいと考えています。
そこで重要になることは何かといえば、「ストーリーテリングの力」です。"誰もが知っているキャラクター"が"誰もが知っているストーリーの文脈"を前提として訴求する力はとても大きいと感じます。さらに、『島耕作』の認知度やヒットに裏打ちされたストーリーの力はもちろんですが、彼自身の肩書の変遷や原作版権ならではのオリジナルマンガ制作が可能な点から、活用方法は無限にあることが『島耕作』をIPとして見る時の最大の特徴かもしれません。
最新シリーズでは社外取締役となっていますので、自治体や公的機関、特殊法人といったクライアント様との実績が増えてきていますが、私はこれほどさまざまな企業や自治体を股にかけて多様かつ柔軟にIP活用されるキャラクターを見たことがありません。
──具体的な施策や反響を聞かせてください。
米野:
たとえば、大きな反響があった事例として2023年に実現した「佐賀県副知事 島耕作」が挙げられます。"民から官へ"という社会の潮流もあり、佐賀県様から島耕作起用の打診をいただいたことから始まり、打ち合わせを重ねる中で「社外取締役となった島耕作に、副知事に就任してもらい、県の事業をアピールしてもらおう」という企画になりました。
スポーツビジネスや半導体事業のPR、また、オリジナルマンガの配信や執務室展示といった多角的な施策を展開した結果、「第66回日本雑誌広告賞」「京都アニものづくりアワード2024」等の広告賞を受賞する企画となり、メディア露出の広告換算費は11.5億円を記録しました。近年ではもっとも大きな話題になった事例です。
社外取締役となった島耕作だからこそ実現できた「佐賀県副知事 島耕作」企画
米野:
他には「日本中央競馬会(JRA)」様創立70周年(2024年)を記念したコラボレーション「島耕作~競馬探訪篇~」もストーリーテリングが盛り込まれた企画です。
著者である弘兼憲史先生監修のもと、島耕作が、一頭の白毛の牝馬に出会い、その馬の名付け親・馬主となったことをきっかけに競馬の奥深さやロマンを知っていく、というストーリーでオリジナルマンガが講談社のマンガ配信サイト「コミックDAYS」に期間限定で掲載されました。多くの人々の目に触れ、東京競馬場でもイベントが開催され、好評の声を多数いただいた事例です。
競馬初心者から愛好家まで楽しめるコラボレーションとなった「島耕作~競馬探訪篇~」
──課長をはじめ、いわゆる"現場時代"の島耕作を起用したプロモーション事例なども多いのでしょうか。
米野:
もちろん数多くあります。
食品や酒類、アパレルといった、いわゆる一般商材とのコラボレーションにも強みがあるのが『島耕作』です。この場合はサラリーマン時代の島耕作が輝きます。
「島耕作が身に付けている」「島耕作が愛用するブランド」といった、彼の肩書やスタイリッシュな生き方が投影された訴求が可能になります。
エドウイン様とは、同社のビジネスシーンにも使用可能なシリーズ「デニスラ」とのコラボレーション企画で「デニスラ部長/デニスラ課長 島耕作」として描き下ろしのビジュアルを活用した事例があり、こちらは累計でなんと30万本以上の売上となったと伺いました。
「島耕作が穿いているデニム」という印象がポジティブに作用し
販売に寄与したエドウインとのコラボレーション
──『課長 島耕作』と『部長 島耕作』など、世代の違う島耕作が同時に起用されるケースもあるのですか?
米野:
私も最初は驚きましたが、そんなことも可能ですし、そこがシリーズとして続いている強みでもありますね。
本作の歴史はそのまま人間・島耕作の歴史ですし、同一人物でありながら違う時代の島耕作が同じ時空に存在することも可能であるという、アクロバティックなことも受け入れるのが、『島耕作』のIPとしての最大の強みなのかもしれません。
──著者である弘兼憲史先生はIP活用に対してはどのような印象を持たれているのでしょうか?
米野:
有名な話ですが、弘兼先生は元々電機メーカーで働いていらっしゃった、いわゆるサラリーマン出身の漫画家です。先生の想いとしては「自分のマンガ・作品が多くの企業に寄与できるのであれば喜んで協力させてもらいたい」と、常に前向きに検討してくださいます。
描き下ろしをはじめ、企画ごとのオリジナルマンガ監修にも寛容で、ご相談の際にも快諾していただくことがほとんどですので、この点も知っておいてくださいますと嬉しいです。最近では弘兼先生ご本人への登壇依頼のお話も受けることがありますね。
ライセンス担当も驚いた、さらに意外すぎるコラボレーション
──『島耕作』というIPの汎用性の高さ、企画に対しての柔軟性には目を見張ります。他にもライセンス担当者として「これはユニークな企画だ」と感じた事例はありますか。
米野:
思いがけない企画、こういう展開も可能なのかと感じた代表的な事例としては、人気女性シンガーJUJUさんの楽曲「一線」のMV(ミュージックビデオ)での『島耕作』とのコラボレーションでしょうか。
本作のファンであり、全シリーズを読破していると公言されているJUJUさんからのオファーがあり、完成した映像では、歌詞と『課長 島耕作』の恋愛模様にフォーカスした内容が見事なまでにマッチしていて"島耕作のMV"のような印象にもなり、JUJUさんの公式YouTubeチャンネルで期間限定公開されましたが、好意的なコメントも多く、今まで作品に触れてこなかった方々にも知っていただくきっかけを作っていただきました。
「一線」のMVでは島耕作とヒロインの大町久美子が出演し、
2人の出逢いをはじめ"悲喜こもごも"を描いた原作でのシーンが使用された
米野:
他には、朝日放送テレビ様・KDDI様との共同企画である「課長 島耕作のつぶやき」も面白い活用方法だと思っています。
『島耕作』の"キャラクター名・作品世界観を活用"して、中尾明慶さん主演の「スーパーサラリーマンの処世術を学べるスマホ特化型実写ビジネスドラマ」としてSNSで配信しました。
島耕作のビジュアルを使用するのではなく、あえて世界観を起用し、実際の俳優さんたちが演じることでエンタメ性に富んだ内容に仕上がり、時代にマッチした施策だと感じました。
YouTube|【縦型ドラマ】課長 島耕作のつぶやき
スキマ時間に楽しめるエンターテインメントとして
SNSを中心に配信されたスマホ特化の縦型実写ドラマは幅広い世代から反響を得た
活用の可能性はもはや無限大・・・昭和創業企業の紹介や、AIエージェントにも!?
──『島耕作』というIPについて今後、どのような展望を描いていますか。
米野:
直近の話題で考えますと、2026年は「昭和100年」の佳節ということで話題になっていますね。『島耕作』も昭和から続くマンガ作品ですので、同時代を駆け抜けてきた企業・団体様とは親和性のあるコラボレーションができるのではないかと考えています。
激動の昭和の高度経済成長期、バブル期、その後の低迷期などの時代に翻弄されつつも、「いかなる時代にも不断に前を向き続け進み続ける」という作品性もあり、企業や自治体の永続性・サステナビリティ性のアピールにもうってつけではないでしょうか。
先ほどもご紹介しましたが、『島耕作』は34歳から77歳まで成長している主人公の物語であるため、どの年代の素材でも利用可能ですし、「異なる年代の主人公同士の対談」といった提案も可能です。
また、グローバル化がますます進むこれからの時代、「Think Global(シンクグローバル)」という社長に就任した際に島耕作が打ち立てたスローガンから、日本のビジネスマナーを伝える語り部や、AIアシスタント・島耕作というようなアイデアが実現できたら面白いと考えています。
──最後に本記事の読者の方々へメッセージをお願いします。
米野:
繰り返しになりますが『島耕作』シリーズは、認知度・汎用性・柔軟性が高く、また著者である弘兼先生も様々な企画に寛容なIPです。
佐賀県様やJRA様の事例で述べたように、新たな肩書を付与した「〇〇 島耕作」というような企画も大歓迎です。言うなれば"オリジナルの島耕作も作れる"とお考えいただくことも可能です。企画が固まり切っていない状態でも、お問い合わせに対しては真摯に向き合いたいと考えていますので、ぜひお気軽にご相談くださいますと幸いです。
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撮影/柏原 力 インタビュー・文/加藤 秀夫 編集・コーディネート/関根永渚至(マンガIPサーチ)