『ブルーロック』を、日本を代表するサッカーマンガIPに! 【講談社・マンガIPライセンス担当者が語る】

目次

2018年の連載以来、フットボーラーとしての"生き残り"を懸けたプロジェクトに挑み、キャラクターたちがエゴイズムを開花させていくという作品性が読者の心をつかみ、"史上最もイカれたサッカーマンガ"として人気を集めている『ブルーロック』は、2024年時点でのコミックス発行部数の全世界累計が4,000万部を突破し、世界18カ国以上で翻訳出版されている。国内外のプロサッカー選手にもファンが多く、現在"日本を代表するサッカーマンガ"といっても過言ではない本作品のライセンス担当者である松本友成と岩崎大悟に、彼らが目指すIP戦略の展望を聞いた。

【本記事の語り手】
講談社 ライツ・メディアビジネス本部 所属
『ブルーロック』ライセンス担当
松本 友成(写真左):広告起用・キャンペーン、コラボカフェ企画を担当。
岩崎 大悟(写真右):サッカーシーンとの連携、イベントおよび催事企画を担当。

世界をも魅了する『ブルーロック』

――「週刊少年マガジン」で連載中の『ブルーロック』は、2022年のアニメ放送を皮切りに、スピンオフ作品の劇場版公開や2.5次元舞台化が続く、今もっとも勢いのある作品のひとつだ。IPとしても引く手あまたでまさに快進撃中だが、ライセンスを担当する二人はさらにその先の"世界"を見据えている。

岩崎
『ブルーロック』は原作が2018年に連載が始まり、一話目のインパクトも強かったことから当初より注目度が高かったのですが、アニメが始まった年に開催された「FIFAワールドカップ(2022年開催)」をきっかけに大きく飛躍することができた作品だと考えています。
サッカー好きの方は記憶にあると思うのですが、2022年のワールドカップで日本代表は、強豪チームが揃う"死のグループ"の中で健闘され、その姿が、「リアルブルーロックだ!」と海外でも話題になりました。また、同時期にワールドカップで活躍した三苫薫選手を起用したアプリゲームのCMを放送していたことも重なり、"これからオファーしたいIP"になるきっかけになったと感じています。

「FIFAワールドカップ」開催中に放送されていたTVCM
ワールドチャンピオンになるために!ブルーロック Project: World Champion
YouTube|【公式】ブルーロック プロジェクトワールドチャンピオンより

松本
『ブルーロック』という作品は、まだまだ成長過程にあると考えておりますが、今後、"日本のスポーツマンガを代表する作品"の一つになることを確信しています。ゆくゆくは日本国内だけでなく、世界的な人気を獲得していきたいです。決して簡単な道ではありませんが、これまでに手がけた様々なコラボ事例での感触や反響を考えると、その兆しは確かに見えていると感じています。というのも、すでに日本国外でも人気作品の一角になっていて、海外のアニメファンからの支持も高まっていることが理由です。

岩崎
タイアップなど、企画の相談時にもよく話題になるのですが、2021年に実施したイングランド・プレミアリーグの名門「リバプールFC」とのコラボをきっかけに、海外チームからも直接問い合わせをいただくようになりました。2023年に実施したイタリア・セリエAの名門「インテル・ミラノ」との原作コラボでは、原作者の金城宗幸先生とインテルの選手やスタッフたちがお会いした際に、みなさんがサイン待ちの列を作ったほどで、世界のサッカーシーン最前線にも『ブルーロック』の魅力は浸透してきていると実感しました。世界中の作品ファンの期待に応えるためにも、海外でのIP展開も私たちの大きな使命です。

漫画担当のノ村優介先生描き下ろしの
「ブルーロック×インテル」の"エゴい"コラボイラスト

Jリーグとのコラボで見えたブルーロック効果

――IPビジネスとして早い段階で海外コラボが実現し、展望が広がる兆しも感じたが、国内における地位の確立も重要と考え、どんなIP作品になりたいのか、目指すべき姿の輪郭が見えたのは、「公益社団法⼈ ⽇本プロサッカーリーグ(以下:Jリーグ)」とのコラボだったと語る。

岩崎
私は元々サッカー好きで、ライセンス担当になった時から、いつか「Jリーグとコラボをしたい」と考えていました。こちらからお声がけしたタイミングが、2023年にリーグ開幕30周年を迎える直前だったことに加え、スタジアムへの新規来場者を呼び込む施策をJリーグ様が探っていたこともあり、お互いのビジョンが合致したことからコラボが実現しました。

リーグ開幕30周年から継続しているJリーグとのコラボ

松本
アニメ放送前まで『ブルーロック』の原作の読者層は男性の比率がやや高かったのですが、アニメ放送後は男女比が半々くらいになり、グッズ購入に関して言えば、女性の比率が非常に高くなりました。実際に2023年にJリーグと初めてコラボした際は、国立競技場でコラボイベントを開催したり、オリジナルグッズを販売した結果、スタジアムへの⼥性来場者が増え、推しキャラのグッズと写真を撮ってSNSに投稿する様子が多く見られるなど、これまでにはなかった現象が起こったとJリーグ様から喜びの声をいただきました。

岩崎
ワールドカップと同時期に、アディダスとのキャンペーン企画も実現しました。サッカー日本代表2022ユニフォームを購入したら、そのユニフォームを着たキャラクターのカードステッカーがもらえるという施策です。作品のファンやサッカーファンが、共に⽇本代表を応援しようという機運を⾼めた企画になりました。これらのコラボを経験したことで、日本代表文脈の企画にこそ『ブルーロック』はマッチすると確信できました。

実は汎用性が高い!? "エゴイズム"という作品テーマ

――タイアップやキャンペーン企画が成功を収めてきた理由には、『ブルーロック』ならではの作品のメッセージ性が大きく関係していると分析している。

松本
作品の重要なキーワードでもある「エゴ」「エゴイスト」というワードが強力なキラーフレーズになっていると感じています。ほかのスポーツマンガやアニメ作品には、友情や青春、チームワークといった爽やかかつスポ根的なテーマを持つ作品が多いのですが、『ブルーロック』の場合は、それらの要素よりも"エゴイズム"を強く打ち出しています。

岩崎
それまでエゴイストという言葉には、自己中心的などのマイナスなイメージがありました。しかし、本作では「自分に正直になる」「信念を曲げずに進む」といったプラスの意味合いで使われているため、作品を通して読者がエゴイストを前向きに捉えられるようになり、それが世間にも浸透していったのだと思います。

松本
エゴイストを人格化したようなキャラクターが、作中の「青い監獄(ブルーロック)プロジェクト」の全権を握る毒舌コーチの絵心甚八(えごじんぱち)で、彼にスポットライトを当てたコラボも数多くあります。大きな話題となったのは、絵心をメインビジュアルのセンターに据えたリクルート様の「ホットペッパービューティー」とのキャンペーン企画です。実は『ブルーロック』が、ホットペッパービューティー初の本格的なIPコラボだったそうです。Xでのコラボ初出と同時にとんでもない数のブルーロックファンからの反応が集まり、キャンペーンの成功を確信しました。また、このコラボを企画した制作会社様は広告賞も受賞しています。

意外性とキャラクターのオフシーンが描かれたホットペッパービューティーとのコラボは大きな反響を呼び、描き下ろしビジュアルの商品化を熱望する声も寄せられた

岩崎
「神奈川県川崎競⾺組合」とコラボした川崎競⾺でのキャンペーンは、絵心の独壇場と言ってもいいくらいのプロジェクトでしたね。絵心の名ゼリフをもじった、見る人を煽るようなコピーも相まって大きな注目を浴びました。

作中で「ブルーロックプロジェクト」を指揮する絵心甚八も特徴的でファンが多く、キービジュアルの"顔"になる企画が多い
※画像は川崎競馬でのコラボビジュアル

松本
「No.1を目指す!」という作品のメッセージは、企業のプロモーション活動とも非常に相性がいいですね。実際に、森永製菓様では「ダース〈ミルク〉VS白いダース」という美味しさを競い合うキャンペーンを行いました。キャラクターたちが常に競い合っている作品なので、いい意味での対立構造が創出できることも、『ブルーロック』の大きな特徴のひとつで、それによって企業のブランドや商品、サービスを強く訴求する効果が見込めると考えています。
また、『ブルーロック』はほかの作品と比べても、キャラクターのプロフィール等が細かく練られているので、グッズ化やコラボカフェのメニュー化もしやすいのだと思います。たとえば出身地、誕生日はもちろん、イメージカラーや好きな食べ物、さらには"お風呂で最初にどこから洗うか"まで設定されています(笑)。原作者の金城宗幸先生の発想力にはただ驚くばかりです。ありがたいことに、クライアント様の多くが、こういった点も含めて作品を理解してくださっているので、キャラクターの魅力が引き立つような面白い企画を相談してくださいます。また、作品名の"ブルー(青色)"にとらわれる必要もなく、大胆なカラーチェンジ企画をご提案くださるクライアント様もいらっしゃいます。

ブルーという色にとらわれず、【レッドロック】と称した日清焼きそば「U.F.O.」とのコラボビジュアル

松本
ライセンス担当としては、様々な方面からいただくお問い合わせに感謝をしながら、ひとつひとつ丁寧に対応していきたいと考えています。現状をお伝えすると、施策を成功させるカギとなる描き下ろしのリードタイムも踏まえて、半年~1年先を見据えてご相談いただけると嬉しいですね。

世の中への浸透を感じたタイアップ企画

――数々の企画を成功させてきた『ブルーロック』。その事例はさらにリーチする層を広め、"社会的作品"になりつつあることを実感しているとのこと。

岩崎
最近の事例として印象に残っているのは、くら寿司様とのコラボレーションです。講談社作品では初となる大型キャンペーンでの起用だったこともあり、私たちも期間中に食事をしに行ったのですが、お子様連れのファミリー層が多くて驚きました。ほかには、最近の「箱根⼩涌園ユネッサン」とのコラボでは、期間中の来館者数が増えただけではなく、コラボ初日からオリジナルグッズをお買い求めるファンの方々が数多くいらっしゃったと伺いました。

作品人気がファミリー層へも浸透していることを証明した「くら寿司」とのコラボレーション
※画像は旗艦店である「原宿店」の店舗装飾イメージ

松本
一般社団法人日本たばこ協会が推進している2024年の「20歳未満喫煙防止キャンペーン」にも『ブルーロック』が起用されました。全国の中学校・高等学校や20 歳未満が集まりやすい店舗・施設を中心に、啓発ポスターやPOPが展開されています。Xなどで「通っている学校にブルーロックのポスターが貼られていた!」という興奮の声も多く見られ、ついに社会課題とのタイアップに選ばれる作品にまで成長したのかと、感慨深いものがありましたね。

「20歳未満喫煙防止キャンペーン」のポスタービジュアル
世の中ごとへ訴求するIPとしても選ばれるように

岩崎
意外な化学反応を起こした事例で言うと、定期的に開催しているサンリオキャラクターズとのコラボレーションがあります。主人公たちが緊迫シーンの多い作中から抜け出して、サンリオキャラクターズと癒やしタイムを楽しむというようなギャップが受け入れられているのだと思います。

期間限定ポップアップショップが開催ごとに大反響を呼んでいるサンリオキャラクターズとのコラボビジュアル

――『ブルーロック』はスマホゲームとしても絶大な人気を誇っている。2022年12⽉にリリースした「ブルーロック Project: World Champion(以下、PWC)」は、事前登録者数100万人を突破し、アプリセールスランキング1位を獲得してスタートした。

岩崎
PWCは第⼀期アニメ放送中にリリースされ、現在では約600万ダウンロードを突破しています(2024年7⽉現在)。サービス開始時期がワールドカップの盛り上がりとも重なっていたこともあり、アプリストアランキングで第1位を獲得しました。
2024年4⽉には、英語版のアプリもリリースされましたし、2024年3月には、新たに「ブルーロック BLAZE BATTLE(略称:ブレバト)」がリリースされました。3Dのキャラクターたちを使って熱いサッカーバトルが楽しめるという内容で、こちらにも大きな期待が寄せられています。

松本
スマホゲームの浸透が、『ブルーロック』の成長を加速させるきっかけになればいいなと、今後も期待しています。

サービス開始以降、多くのユーザーに親しまれている「ブルーロック Project: World Champion」
アプリゲーム公式サイトはこちら
アプリゲーム舞台裏秘話はこちら

IPとしての可能性は無限大! 関係者全員でIPを成長させたい!

――展望する先は「日本を代表するサッカーマンガIP!」と話すライセンス担当の二人。その夢はかならず実現できると確信していると熱く語る。

松本
『ブルーロック』は、著者・編集部・ライツ・アニメ製作委員会などの関係者一同が同じ方向を向き、どうすれば作品をより多くの方々に楽しんでもらえるかを常に考えています。そのためにも我々ライツは『ブルーロック』という作品の持つ唯一無二の世界観や強いメッセージ性、キャラクターの持つ様々な個性などを、商品やタイアップなどのライセンスを通じて世界中に届けていきたいです。

岩崎
直近の目標としては、スポーツブランドやアパレルとのコラボを実現したいと考えています。従来のキャラクターアイテムという枠組みだけではなく、デザイン性や機能性を備えた本格的な商品展開ができれば、作品の価値を高めるだけではなく、より幅広い層の方々に作品を知っていただけるきっかけになると考えています。
ほかにも、いつか「ブルーロック杯」と称した少年サッカーイベントを開催するのも夢です。やがては今の子どもたちが"ブルーロック世代"と呼ばれ、サッカーシーンを盛り上げ、その流れが長く受け継がれていってほしいという願いもありますね。

松本
『ブルーロック』は底知れぬ可能性を秘めた作品です。今後より世界的な人気を獲得していくためにも、我々も新しいことにどんどん挑戦していきたいと考えています。このインタビューをきっかけに、少しでも『ブルーロック』にご興味をお持ちいただいた皆様からのお問い合わせを心よりお待ちしています。


撮影/神谷 美寛 インタビュー・文/アベキミコ 編集・コーディネート/加藤 大二郎、加藤 秀夫(マンガIPサーチ)

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